更年期はキャリアの最盛期と重なります。 その理解と支援が、組織の未来を守ります。
40〜50代は経験を積み、組織を支える中核世代。 しかし同時に、多くの女性にとっては更年期と重なり、心身の不調を抱える時期でもあります。 その変化を“個人の問題”として片づけるのではなく、経営課題として捉え、職場で理解と支援を行うことが、優秀な人財の継続的な活躍と企業の競争力維持につながります。
更年期とは
40〜50代は、多くの人にとってキャリアの成熟期です。経験を積み、組織や社会の中で重要な役割を担うようになる時期ですが、女性にとってこのタイミングは「更年期」と重なります。
更年期は閉経をはさんで前後約5年、合計約10年間を指します。
日本人女性の平均閉経年齢は 50.5歳。一般的には 45〜55歳 が更年期とされますが、実際には40〜60歳前後まで心身に不調が現れる可能性があります。
その主因は卵巣機能の低下によるエストロゲンの急激な減少。
自律神経に影響を及ぼし、身体的・精神的な不調を引き起こします。
症状と仕事への影響
更年期には 200種類以上の症状 があると言われ、現れ方には大きな個人差があります。
代表的な症状には：
- 身体的症状：のぼせ、発汗、めまい、倦怠感、不眠、動悸 など
- 精神的症状：イライラ、不安、抑うつ、集中力低下、無気力感 など
厚労省の調査によれば、50代女性の約38％が更年期障害の可能性を抱えているとされています。これらの症状は、生活だけでなく仕事にも大きな影響を与えます。
企業にとっての影響とリスク
更年期症状による労働損失（欠勤、パフォーマンス低下、離職、採用コストなど）は、 年間 約1.9兆円 にのぼると推計されています。
これは女性特有の健康課題の中で最大規模の経済損失です。現在、就業女性の約4人に1人が更年期世代に該当し、今後、更年期世代に該当する就業女性の割合はさらに増える見込みであり、企業経営におけるリスクは拡大しています。
更年期の見えにくさと職場環境の重要性
更年期の課題は「見えにくさ」にあります。閉経後は変化を自覚しやすい一方、閉経前の不調は原因がわかりにくく、適切な対応が遅れがちです。
更年期の症状は以下の3つの要因が重なって影響します。
- 女性ホルモンの減少
- 本人の気質・体質
- 本人が置かれた環境
特に職場環境の理解や支援体制は、症状の重さやキャリア継続に大きく影響を与えます。体調が深刻化する前に、職場での柔軟な配慮や予防的支援（セルフケアの促進、相談体制の整備など）を行うことが、女性のキャリア継続と企業の生産性維持の両立に大切な考え方です。
更年期障害と睡眠課題
見逃せない健康リスクと仕事のパフォーマンスへの影響
更年期世代の女性に多く見られるのが「睡眠の問題」です。調査では、7割以上 が不眠症状を抱えている可能性があるとされています。
ホットフラッシュやホルモン変動によって入眠困難や中途覚醒が起こりやすく、さらに睡眠時無呼吸症候群などのリスクも高まります。
- ホットフラッシュ（のぼせ・発汗）による寝つきの悪化・中途覚醒
- エストロゲン・プロゲステロンの減少による自律神経・呼吸機能への影響
- 睡眠時無呼吸症候群の増加傾向
睡眠の質の低下は心身の不調を悪化させるだけでなく、集中力・判断力・生産性に直結する深刻な経営課題です。
こうした不眠症状は、決して「我慢するしかないもの」ではありません。他の更年期症状と同様に、セルフケアや適切な医療的対応によって改善・緩和が可能です。
睡眠に対する正しい理解と適切な対応は、更年期世代の女性が健康的に働き続けるための基盤とも言えるのです。
更年期は「終わり」ではなく「節目」
更年期は「終わりの時期」ではなく、「キャリアを継続するための節目」と捉えることができます。企業が理解と支援を行うことは、優秀な人財の活躍継続と組織の生産性維持に直結します。
- 優秀な人材の活躍継続
- 離職の防止
- 組織の生産性向上
といった観点からも、持続可能な人材戦略に欠かせません。
女性社員の変化に寄り添い、企業として適切な対応を。
更年期への理解と支援は、人材を最大限に活かす“戦略的投資”です。
